野閑人です。(2005.04.02)

 この頃、江戸気質と江戸っ子気質は少し違うと思うようになった。
江戸気質は意気も粋もあり、江戸情緒もうかがえるが、
江戸っ子気質は、少しシミッタレていて、多く品が無い。

 意気で粋である江戸気質とは例えば次のような例か。

 両国の川開きの花火は、料理屋や船宿が景気を付けるために
始めたものだが、毎年陰暦五月二十八日に行われて、
安永年間(1772〜)頃から非常に盛んになった。
 柳橋の芸者は深川辰巳芸者の系統を引いた江戸第一の芸妓だったが、
その一番の芸者が、川開きの日は、身体がいくつあっても
足りない一番の稼ぎ時であるはずなのに、その日には
営業しないのがきまりであったという。

 また土用丑の日は鰻が売れる。それだから明神下の「神田川」とか
鉄砲洲の「大黒屋」とかいう大きな鰻屋はその日に休んだ。

 また江戸の問屋筋には資本の少ない小売人が品物を仕入れに来る。
いずれも元手が少なくて半端に仕入れをする。その時に、問屋は、
数が少ないから、安い値で上げます。数が多ければ、この値では
上げられません。もっと高く出します。こう言って商いをしたそうだ。

 また金持ちは、花見に出かけて、食事を包む竹の皮に金箔を置いて
それを捨てて帰ってくるというようなことぐらいはやった。また伽羅の香を
焚いてすぐ煙にし、灰にしてしまう。伽羅の香は一匁三十五両内外で
あったという。三十五両は現在の金に換算すると三百万円ぐらいか。
「贅沢が良いというわけではないが、贅沢をするなら贅沢らしい贅沢を
したら良かろう。」と三田村鳶魚翁は書いている。それにつけても
現代日本のエセ贅沢人の多いことよ。贅沢に心が伴ってないねえ。

 これらはみな同じ行き方で、こういうことが江戸の命でもあるように
思われていて、江戸の一つの自慢であった。こういうのが江戸の意気であり
粋であろう。

 これに対して江戸っ子がシミッタレというのは、川開きが江戸中の船宿、
料理屋が金を出し合って景気を煽るのに、彼等は一銭も出さずに、橋の上やら
屋根の上で、玉屋・鍵屋とえらそうに褒めている。畢竟、銭が無いからだが、
これは本当は外聞が悪くて、かなり恥ずかしい話であるはずだ。

 誰かを「富山の薬売り」と決め付けてしもうたが、アシは東京をテリトリーとする
物販会社に異動したきに、さしづめ「江戸の棒手振り(ぼてふり)」というところかの。hi
 そこで江戸の棒手振りの売り声を書いてみよう。音が出んのが残念じゃ。hi

 おなじみの金魚売り。

   きんぎょ〜え〜きんぎょ。赤いべべ着たかわいいきんぎょ。
   え〜めだか〜え〜きんぎょ。

 つぎは苗売り。

   朝顔の苗や〜〜夕顔の苗。糸瓜(へちま)〜冬瓜(とうがん)〜
   白瓜(しろうり)の〜苗。

 豆腐屋。

   とーふぃ〜生揚げ〜がんもどき  とーふぃ〜生揚げ〜がんもどき

野閑人@江戸の棒手振り(2005.04.03)

 少し興に乗って、前に書いた江戸の棒手振りの売り声の続きを。
 棒手振り(ぼてふり)とはご存知の通り、天秤棒の両側に荷を提げて
肩に担いで売りに来る物売りのことで、昔の江戸は昼間でも物音の無い
静かな世界で、物売りの声は、えもいわれぬ季節感と江戸情緒を
漂わしたものだそうです。
(ほんとは音が聞けるとえいのじゃが、文字で書いてみよかの。
アシは、物売りの声を収めた2枚のCDと1本の録音テープを持っちょります。)


金魚売り。

   きんぎょ〜え〜きんぎょ。赤いべべ着たかわいいきんぎょ。
   え〜めだか〜え〜きんぎょ。

 苗売り。

   朝顔の苗(ない)や〜〜夕顔の苗。糸瓜(へちま)〜冬瓜(とうがん)〜
   白瓜(しろうり)の〜苗。

 豆腐屋。

   とーふぃ〜生揚げ〜がんもどき え〜、こんち午(うま)の日〜

 アサリ・シジミ売り

   あさり〜〜し〜じみえ〜 あさり〜〜む〜きみえ〜
   (江戸の子供達はこれを「あっさり死んじめえ」と聞いたそうだ。)

 納豆売り

   なっと なっと 〜〜なっと なっと〜味噌豆〜〜

 鋳掛屋

   えーいかけ えーいかけ えーいかけ錠前なおし

 屑屋

   くずーい くずーい えーくずいお払い