2006年7月10日
戸田浩司君へのご支援 ありがとうございました
「戸田浩司君支援会」会長  池 上  武 雄
 戸田浩司君を支援してくださっている皆さん。おかげ様で戸田浩司君は,皆さんの大きな応援の力をいただいて,6月20日に高知の病院を退院しました。
 彼は今,病院への通院を続けながら,現在休学中の大学への復学を目指して,リハビリに励んでおります。退院できたこの機会に,ご支援くださった皆さんへ,戸田浩司君の発病から手術・退院にいたるまでの経緯をあらためてご説明させていただくとともに,この間の彼の闘病中にいただいた皆さんからのあたたかい,そして変わらぬご声援に対して,心からのお礼を申し上げたいと思います。
 
 ご存知のとおり戸田浩司君は,昨年9月初めに突然高熱を発して倒れ,検査の結果,EBウィルスに対する免疫不全が原因の「血液腫瘍」と診断され,先の見えない厳しい闘病生活に入りました。その後,化学・放射線治療、抗がん剤投与を経て,根治治療には「造血幹細胞」の移植手術が必要であると宣告されました。
 ウィルスを退治する働きをもつ正常な白血球を作り出す「造血幹細胞」の移植には,当時3つの方法が考えられました。
 まず,彼の白血球の型(HLA)に合致した骨髄液をもつドナー(骨髄提供者)からの「骨髄移植」です。これが,その時選択し得る最善の方法でした。
 しかし,残念ながら,彼の家族にも骨髄バンクに登録されたドナーの方たちの中にも,彼と一致したHLAをもつ方はおりませんでした。
 次善の方法として,できるだけHLAの近い人の末梢血(体内を循環する血液)中にわずかに含まれる造血幹細胞のみを抽出して移植する「末梢血造血幹細胞移植」がありました。
 三番目は,赤ちゃんの臍(へそ)の緒や胎盤から採取した臍帯血(さいたいけつ)を移植する「臍帯血移植」です。ただこの方法は,造血幹細胞の採取量が少量のために,これまで移植を受けられる患者さんは小児が主で,成人への症例が少ないものでした。
 
 この事実を知った戸田浩司君は,同級生をはじめ,高校時代にお世話になった塾の先生や塾生,大学の野球部員や友人等多くの仲間に,メールで自分の病状と,その最善の治療方法である「骨髄移植」ができるように,骨髄バンクへのドナー登録を呼びかけました。
 そして同時に彼は,『自分への支援とともに,自分同様「骨髄移植」をお待ちの多くの患者さんのためにドナー登録を呼びかけてほしい。』と訴えたのです。
 戸田浩司君をはじめとして「骨髄移植」を待たれている患者の皆さんが移植のチャンスを得られるためには,日本の人口比では30万人のドナーの方が必要だといわれています。当時(2005年11月末現在),骨髄バンクに登録されていたドナー数は22万人余りでした。
 
 この戸田浩司君のメッセージを受けて,昨年末,私たちは「戸田浩司君支援会」を立ち上げ,12月29日をもって全国の皆さんに『骨髄バンク8万人登録運動』を呼びかけたのです。
 この運動は,日本の教育・スポーツ・文化・マスコミ等各界・各層の共感を得て,骨髄バンクへのドナー登録に対する幅広く大きなうねりを生み出しました。この『8万人登録運動』は,従来からのドナー登録を呼びかける全国の骨髄バンク推進活動と連動したこともあって,今年6月末までに骨髄バンクへの登録数は250 ,675 名を数えるほどの前進をみる事になりました。

 しかし,戸田浩司君のHLAと合致するドナーの方はついに現れませんでした。この間,鎮静化していたウィルスがその活動を活発に再開する前に移植手術する緊急性を優先した担当の医師団は,次善の方法・・・すなわちHLAでは3座違いの弟さんの末梢血から,造血幹細胞のみを抽出して移植手術する,という判断を戸田浩司君本人とご家族に告げました。
 2月28日,この種の病気治療・移植手術に症例豊富な大阪の病院で「末梢血造血幹細胞移植」が行われ,その後の3月〜5月の病状と闘病の様子は,「戸田浩司君支援会」HPに掲載されているとおりです。
 
 まさに言語に絶する移植に伴うGVHD(免疫拒絶反応)と,EBウィルスとの壮絶な闘いを経て,6月20日,戸田浩司君は退院しました。

 これまで戸田浩司君の闘いを見守りつづけてくださった多くの皆さんに,彼は今,心からお礼の言葉を申し上げたいと思っています。そして,ご両親をはじめ彼のご家族もまた,皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。
 私たち戸田浩司君支援会も同様の想いです。私たちは,戸田浩司君,そしてご両親をはじめとしたご家族の方々とともに,心からの感謝の気持ちとお礼をお伝えしたいと思います。

 戸田浩司君は,皆さんからの欠くことのできないご支援の輪の中で,これからも病気と闘いながらねばり強くリハビリを続け,大学への復学,教職への挑戦,そして何より大好きな野球のユニフォームを着てグラウンドに立ち,これからじっくりと人生のマウンドにのぼっていきます。どうかこれまで同様,いや,これまでのご支援に倍するご声援で,新たに歩み始めた彼の姿を見守ってやっていただきたいと思います。
 皆さんの戸田浩司君へのこれまでのご支援に対しまして,このホームページの紙面にて失礼ながら,一言お礼申し上げる次第です。

 本当に,ありがとうございました。